大臣が誰になったのか確認しようと思ってテレビをつけたらテレビ朝日系列の番組だった。
どこか見たような潮の香り漂う風景が映っている。海もそれなりに碧い。
あ、あれかとすぐ合点がいった。なんか離婚したお父さんが子供つれて南の島にやってきて生活してるぞ、とかいう一応ドキュメンタリーのふりをしたしろうと使用バラエティ番組である。
今年の春、奄美大島へ行った時、大和村(やまとそん)を廻ったのだけれど、その帰り道、坪山豊先生が舟大工修行をされた大金久からバスに乗って、大棚という集落に近づいた時だ。
まず人などいない時間帯なのにバス停付近に黒山の人だかりができている。といっても30人ほど。それでも大和村的には人が集まったということになる。
なんだろうか?と思っていると、どうやらテレビ局のカメラが見える。バスがバス停に横づけされた。
バスの運転手に対して、ディレクターと思しき人間が、出発しようとするバスの運転手さんに
「ちょっと、待って」
と、ごくごくあたりまえのように声をかける。まだ演出指導が終わっていないから待てということなのだろう。一応マスコミで働いていたおれなのでそのくらいのことはわかるが、一応おれという乗客はがいるのだけれど、何も挨拶はない(笑)。きっとそのディレクターと思しき演出指導していた子は目が悪いのか、視覚障害者なのだろう。テレビ朝日は視覚障害者をディレクターに起用できるほどふところの深いテレビ局に、いつのまにかなっていたのだ。おれの不覚だった。感動である。これからは、視覚障害者の方でも、優秀な方なら、きっとテレビ朝日なら差別などせずに採用してくれるはずだ。大和村大棚でテレビ朝日の真の姿をみたおれだった。
ちょっとすると、その子だくさん家族のうちの女の子なのだろう。ハンディカメラと見届け人なのかわからないがアシスタントディレクターをひきつれ、計三人バスに乗ってきた。
「どこにしますか」
「うしろの方で」
などと話をしている。
バスが走り出そうとしたとき、
「じゃあ、バスを追いかけて走ってください」
といった声が外から聞こえた。なるほど、お姉ちゃんがどこかでかけるのを弟くんたちがおっかけるという感動的シーンだ。子どもたちはいわれたとおりにバスをおっかけて走っているのがサイドミラー越しに見えた。なるほど、つまりそのおっかけるシーンのかえしを撮影するためにバスの最後部に陣取ったということか。スタッフは若いのに映像のイロハのイは抑えているようだ。
でも、誰かが、名瀬や港か空港に行くにしても、たぶんこのへんの子持ち家族なら車を持っていないと生活できないかと思うので、車で行く方がリアルだと思うのだが、貧乏だから車がないという前提になっている演出上なのだろうか。バス代は結構高いので、たいへんじゃないか?。8人の子持ちだったらなおさら、などと思ったのだが、よっぽどテレビ朝日がこのお父さんに払っているギャラが安いのだろうか。車さえ買えないなんて。目頭が熱くなった。
で、そんなこを思うと泣きそうになったので(うそ)、高倉があるところでとっとと降りたのだった。郵政民営化で大棚の簡易郵便局はどうなるのだろうか。そんなことが今は気になる。
そういえば、今年の正月ぐらいだったか、徳之島の面縄港あたりをうろうろしていた時だった。ジャンボタクシーがすーっと止まっておれに声をかけた
「テレビ局の方ですか?」
意味がわからない私は「いいえ、違いますよ」と返答した。港の方を見ると一艘の漁船が波しぶきをあげて港へ入ってくる。漁からの帰りにしちゃ妙な時間だなと、どんよりした空を背景にして、乗員が下りるまで見ていると、なにやらテレビカメラを抱えている人がいる。
「ああ、あの船で撮影か何かしていたのだな。でジャンボタクシーを頼んだのか」と合点がいき、ま、どうでもいいや、と潮風をいっぱいに吸い込んでから、ねぐらに戻った。
後日、たまたまテレビをつけたら、田舎の他人の家に泊って芸能人がいろいろ笑ったり泣いたりしようとかいう番組の終了間際だった。そこには、その昔「また会う日まで」という曲でレコード大賞を獲った歌手が徳之島に来て、別れの時、漁船に乗って島を離れていくという感動シーンが流されていた。
「面縄港だ。それもあの時、帰って来た船が、行く時(つまり番組では徳之島に別れを告げるとき)の映像だ」
ちなみに、面縄港から他島への定期船はない。また、漁船をチャーターしていくとしても、徳之島の南端あたりに位置する面縄港。他島へ行くには徳之島の他の港から比して遠い。
演出としてリアリティのなさにちょっと残念ですな。現代はおれがそんな世界で仕事をしていた時と違い、テレビ映像は使い捨てる時代ではない。録画され、あとで何度も何度も個人的jにかつインターネッドでよってたかってチェックされるのがデフォルトだ。そのあたりプロデューサー、ディレクターの子たちの自省はもちろん、スポンサーの担当者くんの的確な判断と批判、指導も必要かと、思うのだがどうだろうか? 老婆心であろうか。
また、あの別れの後、どうやって帰ったのか心配だった面縄港とその港の機能をご存じのみなさん。おそらくカットの声がかかってから無事に面縄港に戻ってきています。ありがとうございます!(なんで、俺が感謝しているのか不明)。しかも、ジャンボタクシーの迎えが来ていたので心配におよびませんよ。
たぶん当日の二便か翌日の一便(徳之島鹿児島間の飛行機は一日二便なので、一便目を「一便」、二便目を「二便」という。その他奄美大島、沖永良部便もあるが芸能人とテレビ局が使うとは思えないので)あたりで戻られたのでしょう。
とにかくも、この番組のプロデューサーとディレクターの現実感のない演出判断がみなさんにご迷惑をおかけしましたこと、昔はそういう業界にもいたおれがとりあえず陳謝いたします(なんでおれが陳謝するのか不明)。視聴者の皆様を不安にさせてはいけませんよ、スポンサーどの。
しかし、このテレビ局は、おれの大学時代の先輩が入社し、まさにその人がかつてとある不祥事で新聞および他局マスコミに挙げられたこともあったテレビ局ではあることは認めます。しかし、当たり前ですが頑張っています。頑張ればいいってものではないことは合点承知の助ですが、いつかどこかで結果がでることもないわけではないと思いますので大目に見てあげてください。
で、徳之島の知人からの連絡によると、英語でGolden Legend とかいう番組で、Good Boyとかいう名称の松竹芸能のお笑いコンビが、現在、徳之島で撮影に傾注しているらいし。
知人は十五夜も近い昨今の夜、外に出て波の音を聞きながら星を眺めようと思ったらしいのですが、その場所で、英語でGolden legend とかいう番組に出ているGood Boyとかいう名称の松竹芸能のお笑いコンビが煌煌とライトを焚いてロケをしているので遠慮して家に帰ったとのこと。
テレビ局もいろいろと大変なので、大目にみてあげてほしいですが、そろそろ限界なのは承知です。あとちょっとだけ視聴者のみなさまには我慢していただければ幸いです。我慢できないなら「見ない」という手もございます。
そうそう、いろいろテレビでとりあげてくれるので大和に、奄美、徳之島、沖縄のことがどんどん広まるという点でだけは、テレビ局の子たち、ありがとね(おふらんす)。でもねえ。