数日前、ネットを飛んできたメールが「おめぇがコザで行ってるいきつけのおでん屋とかいうの教えろ」とかほざいている。
メールの主はハナタレ小僧の頃からのバカ友達。マヌケな野郎のくせして、いっちょまえに流行に乗って沖縄までツアーで遊びにいくらしいが、なんでも那覇や恩納、名護に展開されるツアー客ご用達ホテルじゃなくて
「コザのホテルに泊まることになっちまったから、そんなにうめぇってーなら、いってやる。ありがてーとおもえ」
という塩梅。当方といたしましては、
「てめぇも、やっとこさインターネット使えるようになりやがったか。めでてぇーな。お天道さまがでんぐりげえって、浅草の観音さんもびっくりしてら。教えてやるからありがたくききやがれ」
といつものように丁寧に時候の挨拶をしたあと、こと細かくメールを流したのでした。
それで、ついでといってはなんですが、今日はその店、紹介しておきます。はい。いろいろな雑誌やサイトにも出ているのでいまさら感はありますが…。
お店の名前は「おでん小町」。沖縄市の「中の町社交街」にあります。ホテルニューセンチュリーの向かいの道を入っていってメインストリートの右の角。赤提灯に「小町」の文字が目印。
わからなかったら、その辺で客ひきやっているキャッチ(呼び込み)のニイニイに「おでん屋の『小町』ってどこ?」と聞けばわかるはず。というのも午後10時ぐらいからキャッチのニイニイたちが500円分とか1000円分とか言いつつ夜食(というか朝食かもしれないが)をテイクアウトしていくので知らないわけはない。
というか、昭和44年創業で、コザ暴動の時も営業していたという、この界隈ではかなりの老舗なので知らないともぐり。中の町の「顔」といって間違いはないはず。ニイニイたちも「小町へ行く客」にはしつこい勧誘はしない。というかできない。
わたしも「内地の娘、どうです?」と声をかけられたとき、(ナイチャーのわたしにそういう呼び込みはどうかと思うが。いやそういうことではないが)、「小町へいくから、またね」というと。「あっ」と顔が変わり、引き下がる。中の町のニイニイもお世話になっているお店ということ。
ドアをあけて中に入ってみると、内部は内地でいうところのスナック形式カウンター+座敷X2。多人数でない限り、カウンターに座るのが良いかと思われます。
さて何を頼むかですが、ご存知のように沖縄のおでんは内地のそれとは異なる。関東風のわけはないし、関西風でもなく都内で流行の静岡風でもない。
なんといってもメインは「てびち」。
早い話が豚足。焼肉屋さんなどで食べられるコリコリした豚足と材料は同じでも、まったく異なる食べ物。おそらく初めて見たら、グロテスクと思うかもしれない。というか確かにグロい。けれど、この旨さを体験してしまうと「ここで、てびち食べないと沖縄にいる意味がない」と思う出来。
臭みもなくトロトロとして完全にゼラチン化した皮と脂。すっきりとほぐれる筋。いわゆる沖縄の「てびち」よりもトロトロ度は高い。
一応、沖縄で有名どころを含め、数々のおでん屋で「てびち」を食してきたけれど、ここの「てびち」は格が違うと感じられる。てびちに対するこだわりは先代のお母さんの頃からとのこと。昨今、「お肌のためにゼラチンゼラチン」と呪詛を唱えるお嬢さま方が増加傾向にあるとのことですが、そんなみなさまにもまさにおすすめ。
開店の午後6時から7時ぐらいに店に入ると仕事帰りのうちなー女性が何組かカウンターを占拠していることもあります。それもこれも、この「てびち」がお目当て。肌を地獄に追いやるうちなーの紫外線対策として体の中からということもあるのかもしれません。
とにかく「てびち」は食べないといけません。
ちなみに那覇の栄町で焼きてびちを売り物にしている有名なおでん屋さんもよく知られていますが、両方食べたわたしの好みはどちらかといえばコザは中の町の「小町」に軍配をあげてしまいます。
さて、あとはお好みですが、うちなんちゅーの定番は、くーぶ(昆布)、野菜、大根。時々ウインナ-、こんにゃく、とうふ、というあたりかと思われます。
くーぶはうちなんちゅーの伝統食材。くーぶが採れない沖縄なれど、はるか琉球王国時代の交易の賜物。豚にくーぶはセットです。野菜というのはその時期に採れる青菜を軽くくぐらせ食べるというもの。これも身体に悪いわけがない上、ちょっと珍しい。てびちとXXXXの出汁が野菜に絡んで美味。
説明が必要なのはウインナ-ですか。文字通りウインナーソーセージなんですが、伊藤ハムとか日本ハムとかのものではなく、ホーメルとかそういうところのちょっと長めの沖縄ウインナ-。これ、うちなんちゅーは大好き。それと、とうふは、関東でいう厚揚げ風。うちなーとうふなので感触はちょっと違います。
以上、このあたりを食べれば、沖縄おでんの真髄に肉薄できるはず。
さて、お皿にもられたおでんが出てきたとき、関東などでは、和がらしを使ったりしますが、ここ小町では「マスタード」が主流であるということも付け加えなくてはいけませんでした。
うちなんちゅーでも「マスタードだと酸味があって嫌だ」という和がらし党は多いのですが、味くーたー気味のてびちのおでんにはなぜかマスタードの酸味が絡みあうと旨い、と感じるのはわたしだけではないはず。もしかしたら嘉手納を控えるちゃんぷるー文化の所作かもしれません。トライしてみていただきたいところです。
それと、お酒は飲まなくてもいいんですが、できたら、ビール一本ぐらい、お店のねえさんに奢ったりするとそれもよきかな。もちろん死ぬほど飲んでもかまいません。
基本的にこの店は地元の客を大事にしているので、若い女性からおじい、仕事がえりの中の町のお店の方などがやってきます。おじいがいたりすると、民謡カラオケをうたってくれたりもするので、そういう楽しみもあったりします。わたしもここで遭遇した数々のうちなんちゅーの方々からいろいろ教わったりしましたです。はい。
また頻繁におでんの出前依頼が、近辺のクラブやキャバクラ、スナックなどから来るいうのもここの味がコザで支持されている証明かと思います。
ということで、ひととおり紹介しましたが、最後にひとつ。お腹がすいていたら、「そば」か「うどん」をおでんと一緒にいただくことも可能です。「そば」はうちなーそば、「うどん」というのは内地のうどん。おでんそば。おでんうどんですね。
うちなーの人は「そば」を食べなれているからか、「うどん」を所望する人が多いようにも感じられますが、内地の方ならここは「そば」でいきたいところ。いわゆる沖縄そばとは異なる沖縄の味が堪能できるかと。
この、おでんそば。最初の方で書いた、中の町をいったりきたりするキャッチのニイニイたちの定番食だったりもします。これもおすすめ。
というわけで、コザ、中の町社交街の「おでん小町」。一度トライしてみるのも一興かと。