さて、去った(うちなー的表現ね)6月27日に沖縄で先行発売されていた耳切坊主の新譜『Suzy』。本日、2007年7月25日、目出度く本土発売日を迎えたのでありました。
発売日に入手していたので、とっととエントリーに書こうかと思ったんだけれど、やっぱ、ニッポンのみんなが無理なく買えるようになった頃の方がいいんじゃねーか?と自問自答して、今日になったというわけで。
沖縄の若人(わこうど)バンドは数々あれど、おいらが現状新譜が出たらとにかく常に買っておこうという気になるのは、「MONGOL 800」と、この「耳切坊主」。(MONGOL 800 はちょっとパンク入ってるけどね)
サウンド的には、ほんと、20世紀後半のニューウェイブ、ネオアコの頃によく使われた「いなたい」という四文字がぴったりくる。そ、そっ、きざみまくる、あんな感じのギターサウンドがコア。
そこに妙ちくりんなキーボードなんかも絡んでくる。ドラムのビートはシンプルだけれど、アフタービートをおかずにしたりで、なかなか。またベースの滑り方が、なかなかオイシイ。演奏の隙間を軽々と埋めている。
そしてボーカル。青春だね。嫌いな人は嫌いかもしれないけれど「ジョートーさぁ」と言っておく。これでいいんだ。
でも、おいら、いまんとこ、去年出た『サラバンジ』が一番しっくり来てるかもしれない。というのは以下の理由。
おいらのこと知ってる人は「またかぁ」と笑うかもしれないけど、先に書いたように、80年代初頭、ニューウエイブとかネオアコなどという名前でくくられる音楽があったんだけれど、そういった動きの中で、おいらは、Pale Fountainsってバンドが、かなり好きで、とりあえず新譜が出たら、シングルだろうとアナログだろうと買っていた。クレプスキュールってレーベルやスティッフってレーベルがなんやかんや喧しい頃だったな。
で、そのPale Fountainsってバンドを思い出すサウンドがこの耳切坊主にはあったりしてる。
つまり、いまや50代寸前のおいらに、なんとなく酸っぱい懐かしさを感じさせてくれるというのが、彼らを支持する理由なのかも。逆にいうと、あの80年代のネオアコ体験はないけれど「モンゴル800とか、耳切坊主とかいいかんじィ」と思ってる若人は、Pale Fountainsとか聞いても面白いかもね、なんて、ジジイから提案?。
ほかにも、このあたりだと、あの時代、Buzz CocksとかAztec Cameraとかいろいろあったけれど、おいら的にはPale Fountainsの新しいアルバムが出るまでの<つなぎ>というあたりかな。やっぱり、Pale Fountainsだったなあ、と。
で、耳切坊主というのが、へんちくりんなバンド名だなあと思っている人に、おいらからの余計な親切心。
耳切坊主(みみちりぼうじ。このロックバンドは「みみちりぼうず」と発音しているけどね)とは、沖縄の妖怪話に登場する坊さんのこと。
昔々の沖縄に、放蕩の限りを尽くす女好きで、肌が黒い坊さんがおったそうな(このあたり沖縄裏面史的に、ちょっと示唆的なんだけれど、今回は関係ないので理由はパス)。その肌の色から、黒金座主(くるがにざーすー)という名前でも呼ばれていた。
王様が考えたんだよね。その坊さんのあまりのふるまいが目に余るようになったので、こりゃあの坊主を懲らしめないといけない。ということで、当時、琉球国で、唯一対抗できそうな、北谷王子(ちゃたんおうじ)という人を呼んで「碁の勝負して、黒金座主を、命を賭けてぶっつぶせ」と命令したんだと。
碁の勝負開始。黒金座主は北谷王子を惑わす技を使い権謀術策の限りを尽くすものの、北谷王子はまったく動じず、結局のところ王子の勝利が確定。
王子曰く「おめえさんの命はとんねえから、そんかわりに耳をチョんとさせてもらわぁ」(江戸弁に翻訳)。
黒金座主は耳をちょんぎられ、その傷がもとで破傷風になって、おっちんじまった。
死んじまった黒金座主。怨霊となって、人々の耳を切ろうと町に出没するようになった。執念ですな。というわけで、黒金座主は、耳切坊主と呼ばれるようになった。くわばらくわばら。
ちなみにいっとくと、黒金座主こと耳切坊主はなぜか女の子の耳は切ろうとしなかった。なもので、人々は男の子が生まれた時に、「うふーゐなぐの うまれたんどお」(でっかい女の子が生まれたよー)と歌ったんだとさ。
という、沖縄妖怪坊主の名前をバンド名にした耳切坊主。沖縄であること。沖縄の歴史伝統を感じること。そのあたりが、彼らの音楽にはある。沖縄的「なま」(今)が堪能できると思うのでありました。
新しいものは「ある」。けれど「ない」。
つまり、時代は螺旋でめぐっていくのであって、そういったあたりを通る若人バンドは、今、日本だけじゃなく世界中にたむろしている。だけど、ジジイのおいらが思うに、本当の勝負はそこを通りすぎて、次の90度までのあたりだね。
沖縄の若人バンドは「うちなー」というDNAがある分有利かもしれんけれど。とっぴんぱらりのぷ。
だっからよー。