闘牛の島
すでに絶版のこの本は徳之島の伝説の名牛である「実熊牛」に関わった人々の話をまとめた労作。
まだ書店の棚に並んでいた頃は、ぼくの闘牛熱が小康状態で、機会があったら購入と考えていたため、手にすることはなかった。それに加えて沖縄ではなく徳之島の話だったということもあるかもしれない。徳之島は日本最高峰の闘牛の島だが、そこを深く堪能する以前に沖縄をある程度まで極めなければなるまいという、根拠のない自分なりの戒めがどこかにあった。徳之島関連は次だ、と。そういうこともあって書店で発見しても即座に買わなかったのが運のつき。そろそろ読みたいなと思ったらいつのまにか絶版になっていて、あちこちの古本屋やネットで探索するという時間をここ1年ほど過ごしていた。
先月やっとネットの中古書店に在庫が見つかり購入。到着した日に読み終えた。徳之島の人たちが闘牛にかける情熱の凄まじさと愛情が行間からもほとばしり、ドキュメンタリーとしてとてもいい本だと思った。
実熊牛は闘牛としては高齢になるまで全島一横綱として徳之島で無類の強さを発揮したが、その後沖縄本島へと売られていく。時期は沖縄闘牛の復興期。著者は徳之島の関係者も知らなかった(知りたくなかった)、実熊牛の最期を知ることになるが、そのあたりは読んでのお楽しみ(といっても絶版か)。
個人的には沖縄へ売られていった実熊牛の終焉期と沖縄闘牛界伝説の名牛“ゆかり号”が、対戦はなかったものの微妙にすれ違っていたあたりに興味を覚えた。沖縄闘牛における、ゆかり号時代のトリガーは徳之島の実熊牛によってひかれたのかもしれないと。南西諸島における戦後闘牛は実熊牛を抜きにして語れないのかもしれない。
新潮社に復刊を望みたい。闘牛ファンはもちろん、戦後の南西諸島文化歴史に興味を覚える人のためにも。
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